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●鉄建建設株式会社 管理本部 ダイバーシティ推進部 担当部長 野本 由美子 様
●鉄建建設株式会社 管理本部 ダイバーシティ推進部長 高崎 恭彦 様
●鉄建建設株式会社 管理本部 ダイバーシティ推進部 名川 里菜 様
■介護に直面する40代から50代に向けた情報発信と遠隔介護の支援
− 鉄建建設様が仕事と介護の両立支援施策の実施に至った背景や、どのような必要性をお感じになって実施されたのかについて、まずは教えていただけますか?
【鉄建建設 高崎 様】当社の仕事と介護の両立支援は、ダイバーシティ推進の一環として取り組んでいます。多様性推進への取り組みは、2014年ごろからスタートしているのですが、正式に、ダイバーシティ推進部が立ち上がったのが2018年の4月からです。
介護との両立支援に関しても、同じく2018年からスタートはしましたが、当時、介護問題は、それほど優先度は高くはありませんでした。女性活躍推進への対応が、社会的にもスポットが当たっていたこともあり、そちらの方が取り組みのウエイトが大きかったと言えます。
とはいえ、介護との両立支援も、当社の社員年齢分布のボリュームゾーンにおいて、重要だという認識はありました。現時点で、当社の社員は50代がボリュームゾーンで、これからまさに介護に直面するという課題感がありました。当時は、まずは何らかの情報提供をしていこうということが取り組みの始まりでした。
【鉄建建設 野本 様】LCATを通じて把握した、社員の実態をちょっとご紹介させていただきますと、まさに現在介護中という職員は約6%ですが、3年以内に介護が始まる可能性が高いと答えている人が約48%に上り、両立支援は急務だと考えております。
− 鉄建建設様は男性比率が約90%と高いですね。これまで比較的女性の課題と考えられがちだった介護に対する両立支援に早い段階で着手されたのはどういう経緯だったのでしょうか?また、「仕事と介護の両立支援」プログラムの全体像、人事戦略上の位置付けについても教えてください。
【野本 様】社員構成における性別比はあまり重要ではなく、介護直面世代が40代から50代と、当社のボリュームゾーンだったことがあります。
さらに、その層は社内では管理職という立場であり、組織の中でも中核を担う世代であること、後進を育成するという役割を大きく担っていることから、彼らが介護で離職してしまうようなことになると、現在の仕事に支障が出ることだけでなく、5年後、10年後を担う後進も育たなくなり、組織としては非常に大きな損失だと考えています。
一般的に女性の方が介護の担い手になりやすいという見方がいまだにあったとしても、当社としては、しっかり手を打って対応していかない限り、将来的に見て大きな問題になります。ですから、緊急課題、経営課題として2018年から取り組んでいます。
■転勤が多い建設業だからこそ遠距離介護の支援を厚く
− 仕事と介護の両立支援の取り組みの中で特に配慮されたのはどのような面でしたか?業界ならではの状況への対応などはありましたか?
【高崎 様】建設業である当社は、非常に転勤が多いことが特徴です。必然的に親御さんとは離れて暮らさざるをえない社員も多くなります。親御さんと遠距離で暮らす社員に対しては、「遠距離でも介護は可能ですよ」という情報を提供し、支援していくということに注力しました。
【野本 様】まずは、現状把握に取り組みました。それまでは、漠然とした危機感はあったものの具体的な介護が予想される人数などが見えていなかったのですが、実態把握調査を行ってみると、危機感を裏付ける情報や数値が表れていました。
2019年にはこれらの情報をもとに、仕事と介護の両立支援ハンドブックを制作したり、両立セミナーを開催したりするなど、情報提供をメインに進めました。2020年はキーパーソンになる管理職に重きを置き、セミナーなどを開催したりeラーニングを取り入れたりするなどしました。対象は介護に不安を抱えている人と管理職を中心にし、介護全般におよぶものでした。
■LCATで介護リスクを「見える化」し「意識改革」へ
− 2018年から3年間集中して取り組まれていますが、どのように評価されていますか。また、2022年から、リクシスの「仕事と介護の両立支援セミナー」や仕事と介護の両立支援クラウドサービス「LCAT」(診断・eラーニング・メールマガジンのワンストップサービス)を導入された経緯について教えてください。
【野本 様】3年間やってみて成果はもちろんあったのですが、同時に、介護のことを知れば知るほど介護状況には個人差があるということがわかってきました。たとえば、介護される側には要支援から要介護1〜5があります。介護に至った経緯も、認知症なのか、怪我なのか、疾患なのか。介護する側も、同居しているのか、赴任先からの遠距離なのか、施設に看てもらっているのか、介護できる家族が近くにいるのか……千差万別でした。
そこで、リクシスさんのLCAT診断を行って、社員に自分の介護指数を見える化し、数値化するということを進めました。漠然とした未来への不安が、具体的にいつ頃介護が必要になるのかが見えてくることによって、意識が変わり、それによって行動も変わり、結果も変わるだろうと期待しました。
【高崎 様】当社と雇用関係にある全社員へLCATの受講ライセンスを付与し、現状を見える化した上で研修を受けてもらいました。
− LCAT診断の結果を見て、ダイバーシティ推進部の皆様にはどのような気づきがありましたか?
【野本 様】LCAT診断を全社員にしてもらい、その後、リクシスさんより他社との比較も含めた、分析レポートをいただきました。予想はしていたものの、当社の介護リスクが他社と比べて非常に高いことに驚きました。「介護になったら仕事を続けられない」と答えた人が、他社と比較して2倍。また、上司への相談のしづらさや知識不足など、あらゆる面で不足していることがわかりました。
■動画視聴などの工夫で多忙な管理職に研修参加を促す
− 2022年8月に開催させていただいた、リクシスの「仕事と介護の両立支援セミナー」の反響はいかがでしたか?
【野本 様】最初に自分のリスクを把握してもらった上でのeラーニングは、非常に有効でした。その上でリクシスの酒井穣さんの「仕事と介護の両立支援セミナー」を行い、録画での視聴も期間を延長して受講できるようにしたことで、しっかり受講者の心に響いたなと思います。
リクシスの仕事と介護の両立支援セミナーのコンテンツの中では、介護離職につながる介護負担の目安や、遠距離での介護を実現するためにやった方がよいことについて、特に大きな反響がありました。
「不安が軽減された」「仕事と介護の両立ができるイメージが湧いた」などの声も聞かれ、「両立するための準備が明確になり、行動しようという意識が生まれた」という声もありました。
なお、セミナー以外についての反響ですが、LCAT診断の後に受講するeラーニングやメールマガジンといったプログラムに対する満足度は約87%と非常に高く喜ばしい結果でした。ですから、この取り組みや方向性は間違っていないという確信を得ることもできました。
2023年は、「いざというときの判断行動フローチャート初動編」を導入、フローチャートを活用しながら知識をつけてもらい、今後に備える取り組みを行っています。また、社員から要望のあった金銭面や両立、家族の関係性など、テーマを絞ってセミナーを開催しました。
また、事前の準備のみならず、いざ介護となった時の初動は非常に大事になってきます。そこには管理職が深く関わってきます。全社で実践的な知識を身につけた上で、管理職のリテラシー向上にポイントを置いた取り組みとして、「管理職向けリテラシー向上研修」を行う予定です。
− リクシスのサービスを導入したことによる経営層の評価はどのようなものでしたか?
【高崎 様】経営層も、2022年と2023年に研修に参加しています。異口同音に「ためになった」という感想を受け取りました。経営層自身が実際に介護を経験していることもあり、「自分の苦労を社員にさせてはいけない」という考えを私たちにも共有してくれました。
− 経営層の理解が高まると、社員も介護の話がしやすくなるのではないかと思いますが、そういった声は聞かれましたか?
【高崎 様】はい。実際そういった声も聞こえてきています。介護で休みづらい、介護について相談しづらい、という環境は少しずつ改善されてきていると思います。一例として、「介護休暇」の取得率が、徐々に向上していっています。
【野本 様】これまで介護休暇があることを知らなかったという人と、知っていたけれど取りづらかったという人がいました。取りづらかった人はこれまで有給休暇を活用していたのではないかと思います。
会社がこうして介護施策にしっかり取り組むという姿勢を見せたことで、取りやすくなったのかなと感じますね。
− テーマ別セミナーでは、管理職をはじめとする忙しい社員の受講を実現するためにどのような工夫をされましたか?
【野本 様】はい。現場にいる社員は非常に忙しく、こちらがいくら働きかけてもなかなか受講してもらえないということはあります。ただ、そういう忙しい中でも、しっかり学習ができる仕組みを作ることに注力してきました。
【高崎 様】周知にも力を入れ、社内で発行しているダイバーシティニュースでの告知やイントラネット上での告知などを行っています。今年は任意参加ではありますが、参加率を高める工夫を行っているところです。
■手厚い補償をどう活用してもらうかが仕事と介護両立の鍵
− これまでの施策の実施によって見えてきた課題や、今後の動きについて教えてください。
【野本 様】当社の介護制度は十分に整っているため、課題はそれを運用することであると感じています。当社の介護休業は、法律が定めている対象家族1人につき93日までのところ、2倍の186日に設定しています。また、スポットの介護休暇も法令では介護者1人につき5日というところを10日にして、介護人数は問わずに取れるようにしています。
また、金銭的な支援についても2020年から実施しております。たとえば、遠距離介護の際に帰省にかかる交通費を年に4回まで支援しています。制度は充実させていっていますが、利用率はまだ高くありません。しっかり運用できる風土や意識づくりに力を入れていく必要があると感じています。
【高崎 様】建設業独特の課題でもあると思うのですが、日々建設現場に行って工事を管理しなくてはなりません。すでに少ない人数で現場のやりくりをしている中で、休暇を取得した時に人的支援をどうするのか、業務のやり取りをどうするのか、それらの環境をどう整えるのか。今後、仕事と介護の両立支援策が活用されるようになった後に予想される、こういった新たな課題に対する対応についても検討をしていかなければと考えています。
− 建設業界ならではの課題に対する支援をお聞かせくださり大変参考になりました。本日は貴重なお話を誠にありがとうございました。
◯インタビュー記事内にある「管理職向けリテラシー向上研修」について、体験版をご視聴いただけます。
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