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【リクシスインタビュー】なぜ今、仕事と介護の両立支援策として「管理職リテラシー研修」が必要か ー 損害保険ジャパン様 ー

【リクシスインタビュー】なぜ今、仕事と介護の両立支援策として「管理職リテラシー研修」が必要か ー 損害保険ジャパン様 ー


 

● 損害保険ジャパン株式会社 人事部 ダイバーシティ推進グループ グループリーダー 中満 様(右)

● 損害保険ジャパン株式会社 人事部 人材開発グループ 主査 佐々田 様(左)

 

<インタビュアー>弊社 代表取締役社長CEO 佐々木


■「Diversity for Growth」のもと、経営戦略に基づいた社員の幸せを追求する。

【佐々木】早速ですが「仕事と介護の両立」の御社のこれまでのお取り組みについて伺わせてください。

【中満 様】当社は「Diversity for Growth」(SOMPOグループのダイバーシティ推進のスローガン)というのを経営戦略に位置付けていますので、多様な人材が強みを発揮して活躍するための制度づくりであるとかムードづくりといったものが大前提にあります。

2003年の取り組み当初は女性活躍推進に始まり、2015年からは多様で柔軟な働き方を推進して生き生きと生産性高く働いてもらう「ワークスタイルイノベーション」という取り組みを進めました。2020年からは「D&I(Diversity & Inclusion)の加速」ということで、働き方、仕事のやり方改革を進めることでさらなる進化に向けチャレンジしている状況です。今年度からは中期経営計画が始まり、「Innovation for Wellbeing」をブランドスローガンに掲げて社員の幸せや働きがいをベースに社会に貢献していこうということになっております。

当然、そういった中で「仕事と介護の両立」も、多様な社員の幸せや働きがいの一つとして認識しています。実際、2015年から毎年、複数回のセミナーを開催しており、現在までに述べ1,600名ほどの社員が参加しています。

特に40歳以上の社員に対しては、人生の後半戦に向けて、働き方とか生き方、学び方を真剣に考えるトータルキャリアマネジメントを学んでもらうために長年「ワークライフデザイン研修」を実施しており、2014年からは仕事と介護の両立をこの研修内容に取り入れています

■「仕事と介護の両立支援」というテーマ特有の難しさ

【佐々木】私も多様性推進に携わって長いのですが、女性活躍など他のダイバーシティテーマと比較して、仕事と介護の両立支援というテーマはなかなか難しいな、と感じています。実際のところ、御社ではどうお感じになっておられますか?

【中満 様】そうですね。介護の話を職場で言い出すと若干暗い雰囲気になるイメージがあるのでしょうか、なかなか言い出しにくいという話を聞いたりもします。また、介護に対して職場での理解が十分でない、という課題もありますね。マネジメント層とのより一層のコミュニケーションや、職場全体の理解促進が必要なんだろうなと感じます。御社の管理職リテラシー研修実施につながったのは、そうした問題意識が高まってきたことが背景です。

■「言い出しにくい」を変えるカギは、リーダー、管理職

【佐々木】「介護の話を職場で言い出しにくい」というのは、私どもが提供している仕事と介護の両立支援プログラムLCATのフリーコメント欄に、両立しているビジネスケアラーの方がよく書き込まれている声なんです。御社でもそういった声は聞かれているのでしょうか?

【佐々田 様】私は「ワークライフデザイン研修」で介護に関する講義を担当しているんですけれども、事後アンケートを取ると、やはり「職場で話しにくい」という話は結構出てきます。

ちなみに、ワークライフデザイン研修は何百人を一堂に集めてやるのではなく、1セッション4、50人です。これを1年間10回ぐらいやっているので、参加者は1年で500人ぐらい。これまで累積で7,8年やっているので参加者人数は延べ数千人は超えていますので、そこで出てくる声として結構あるということは、やはり課題として大きいのだと思います。

【佐々木】延べ数千人の社員の方々に、7,8年かけて継続的に仕事と介護の両立のお話を続けておられるというのは素晴らしいですね。それだけ「社員の方にとって重要な課題である」という問題意識をお持ちになっているということでしょうか。

【佐々田 様】はい、そういう問題意識を持っています。先ほど申し上げたワークライフデザイン研修を始めた頃から少しずつ介護の問題は出てきていました。ただ社員の年齢層はどんどん高くなっています。これから10年後となると高齢化も進む。そうすると介護との両立問題がどんどん出てくる。こういった事態を今から見越して、早めに情報をインプットしなくてはと考えているんです。

【中満 様】あと、弊社は仕事柄、全国に転勤する社員が多いんですね。つまり、いざという時、必ずしも高齢のご家族の近くでケアできるかはわからない。だからこそ、「介護というものがいつか自分の身にもやって来るんだよ」「その時になって考えるのではなく、今から準備が必要なんだよ」という啓発・啓蒙をし、体制準備を進めておいてもらわなければ、という問題意識もありました。

【佐々木】なるほど・・・。たしかに、全国転勤する社員の方が多いのに、「介護のことは職場に言いにくい」となると、両立体制を組むのはなかなか難しいですよね。

【佐々田 様】言いにくいということも一つなんですけれども、どうせ言っても(職場の同僚や上司は)わからないだろうという意見もありました。

介護の問題は個別性が高いので、上司がその個別性を理解したうえで適切な対応ができるかというと、そもそも簡単ではないという問題もありますよね。加えて、中満が申し上げたように、弊社は非常に転勤が多いので、相談する部下は転勤族の上司に対して、「どうせあなたはすぐいなくなるでしょう」という思いも少なからずある。だからなおさら「上司には言わない」方向に力学が働く、というのもあるかと思います。

ですので、「誰が上司として転勤してきても同じような環境が築ける」ように、管理職に必要な情報はしっかり全員にインプットしていかなくては、と感じております。

【中満様】やはり、介護に直面する方を支援するには職場の理解が必要だと感じています。だとすると一番最初に「言い出しにくい」雰囲気を変える必要がある。そこで鍵となるのはやはりリーダー、管理職です。彼らの影響力は大きいですから、まずは管理職に仕事と介護の両立について学んでもらいたいと考えた次第です。

【佐々木】少子高齢化が格段に加速するこれからの時代、誰もが仕事と介護の両立と向き合うことになっていきますよね。本来的には年齢問わず、すべての社員が「サバイバルスキル」として両立リテラシーを持っておく必要がある。そのためにも、管理職がそういったエイジングリテラシーの伝播者として機能する重要性も高まってくるのではないかというのが私どもの仮説ですが、これについてはいかがでしょうか。

【中満 様】まさにその通りだと思います。職場のメンバーがそういう状況になることもあるでしょうし、ちょうど50歳になる前くらいから親に対する介護が必要になる状況が近づいていますので、マネジメント層がカギになることは間違いないと感じています。

【佐々田 様】同感です。管理職がそういう研修を受けていることがわかるだけでも下の人が話しやすくなります。「この上司は介護について興味を持ってくれている、勉強してくれている」と、部下がわかっていること自体が、重要だと思いますね。

■「管理職リテラシー研修」を導入してみて感じたインパクト

【佐々木】多様な研修がある中で、なぜ私どもの「管理職リテラシー研修」を選んで頂けたのでしょうか。

【中満 様】昨年御社に開催頂いた、「仕事と介護の両立セミナー」や、Webなどでの取り組みから、御社の専門性の高さはチェックさせて頂いておりました。また、佐々木社長も酒井副社長もまさに介護の当事者でありながら仕事との両立を図られているということもあり、きっと我々の参考になると判断してお願いしました。

【佐々木】ありがとうございます。実際に管理職リテラシー研修にご参加頂いた管理職の皆様の関心・反応はいかがでしたでしょうか。「想定通りだった」ところと逆に、「意外だった」というところがありましたら伺えたらと思います。

【中満 様】今回1回のみの開催で業務中の任意参加ということもあったのにも関わらず、160名近くの参加者があり、やはり介護の問題に関心を持っている管理職が一定数以上いるんだということを痛切に感じました。

意外だったのは、半数以上の管理職が「部下から相談を受けた際に適切な助言をする自信がない」と答えたことです。

実は、われわれの社風からするとこれは大きな驚きでした。

立場上、自信がなくても「何とかなる」というふうに回答するのかなと思っていたんですけれども、これほど管理職が率直に自分の感触を伝えてくれたっていうのは、当事者意識の醸成につながったのかなと感じましたね。

逆に予想通りだったのは、やはり介護に対する十分な知識とか経験が不足していた、ということです。まずイロハのイを、私も含めて初めて知ったという管理職が多かったと思います。

例えば、上司が良かれと思って部下が介護に専念する環境を整えることがかえって部下の介護疲れを引き起こすこと。そもそも「地域包括支援センター」という存在を知らなかった管理職もかなり多かったですね(※地域包括支援センター・・・介護問題が起こった時にまず最初に頼るべき組織)

【佐々木】研修をやってみての手応えはいかがでしたか?具体的な管理職の方々の反応などがあればお聞かせください。

【中満 様】「結構多くの従業員が当事者として既に介護に関わっていることに衝撃を受けた」、「まだ深刻な状況じゃないと思っていたのが実はそうではないとか気づいた」、「(これまで部下から)相談されていなかったんじゃないか」、という声が参加した管理職から寄せられました。非常に大きなインパクトがあったと思います。

【佐々田 様】中満が申し上げたように、管理職が「自信がない」と正直に言ってくれたことが衝撃でした。当社は割と「自信がある」という管理職が多い傾向にあるんです。ですから、いつもなら自信があるという人たちの半分がそう言ったということは、実際にはもっとたくさんの人が自信ないんだろうと思うと大きな衝撃でした。

一方で、1時間の研修を受けただけで、今度は「自信ができた」という人が圧倒的に増えたことにも驚きました。正直そんなに簡単じゃないだろうと思っていますので、その自信を失わないためにも、今後とも地道に研修をやっていかないといけないんだろうと思っています。

また、管理職同士の情報共有ができたことも良かったと思います。たくさんの拠点があるので他の拠点のことはどうしてもわかりづらい。セミナーではオンラインのインタラクティブなアンケート等も活用して頂きましたので、他の拠点ではどれくらいの管理職が既に両立相談を受けているのか、若い人でも介護と両立している社員がどれくらいいるのか、ということを、参加管理職のアンケート結果でリアルタイムに数字で共有できたことは、非常に有効でした。

【中満 様】目からウロコが落ちるところが非常に多い研修でした。今後介護に直面する社員が増えていきますので、管理職への浸透も継続してやるべきと思っています。一方で、安心・安全・健康を標榜する当社としては職場メンバーにも介護リテラシーを高めてもらう必要性があると思っています。

■大切なのは、繰り返しやっていくこと ―接点を増やし、理解を深める

【佐々木】この先介護というテーマを浸透させていくためにどのような施策をされていかれたいですか?

【中満 様】そうですね。最近はいろいろな社内SNSツールも出てきているので、そういったものを活用していかに接点を増やし深度を深めていくかだと思います。情報の露出を高めて、必要な人がタイミングよく情報を見られる状況を整えていきたいですね。

あと、個別性が高い介護問題に対応できる研修を、定期的に開催していきたいと思っています。受ける側からすると「この時期には介護の研修があるんだ」と認知されるようになってくると全体的な風土がもっと醸成されてくるのではないでしょうか。

■育児と介護の両立は、完全に「分離」して施策を考えるべき

【佐々木】2025年問題が迫るこれからの時代、企業の皆様、人事の皆様に向けて、共有していただけるインサイトがありましたら是非ご教示ください。

【佐々田 様】私は育児と介護が常に同じ文脈で語られてしまうのを分離したいと思っています。

法律自体が一つなので仕方がないんでしょうけれども、まったく別ものなのになぜ同じに語るのかは非常に悩ましいところです。

でも、ちょっと考えれば本当は誰でもわかるはずなんです。育児は受けた経験を持っていて、介護は受けたこともなく、未経験なのです。それなのになぜか一緒に語られてしまうことが多い。

一緒に語られてしまうと、本当の実態に合わない施策が講じられてしまうリスクがあると思っています。「仕事と介護の両立」というテーマの難しさ、特殊性をちゃんと理解したうえでの施策設計が必要と感じます。

【佐々木】ありがとうございます。仕事と介護の両立というテーマの「本質」を掴んだうえで、継続的に接点をもちながら、多角的に理解浸透していく取り組みが必要ということですね。
今日はとてもいろいろと貴重なお話しをいただきました。本当にありがとうございました。


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【講演テーマ/タイトル】
2025年問題に備え、今こそ管理職のリテラシーアップを
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