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※本イベント案内ページはこちら(現在申込は終了しております)→ https://event.lcat.jp/
2019年7月31日、リクシスは大手企業人事部様を中心とした、完全招待制のイベント「仕事と介護をめぐる知られざる構造変化」を開催いたしました。
当日は3つのセッションをご用意しました。
1つ目は、弊社が開発した「LCAT(仕事と介護の両立支援クラウド)」利用者のデータを分析した結果、明らかになった仕事と介護の両立に関する意外な実態をレポート。2つ目のセッションは、在宅医療のトップランナーである医師・佐々木淳先生による基調講演、3つ目は介護のプロから見た「従業員の介護負担」を減らす3つのポイントをパネルディスカッション形式でお届けしました。
本記事では、1つ目のセッションをダイジェストでご紹介します。
「LCAT」には現在、これまで企業従業員の皆様、約2500名に回答いただいたデータが蓄積されています。リクシス代表の佐々木より、データから見えてくる実態をご紹介した上で、令和時代の仕事と介護の両立には何が必要なのか、参加者の皆さまとディスカッションさせていただきました。
■日常的に介護しながら出社している人は、幅広い世代に存在する
最初に取り上げた質問は「現在、要介護認定者を日常的にサポートしながら仕事をしていますか?」というもの。これにYESと答えた人の割合を、年代別の回答者(n=合計2,500)を分母にして比率を出したのが以下のグラフです。
仕事と介護の両立というと、40代後半以降が中心と考える方が多いかと思います。しかし実際には30代で17人に1人、20代でも33人に1人が日常的に介護に携わっていることが分かりました。
さらに「LCAT」では、回答者が管理職か否かという設問があります。上記の問いにYESと答えた方のうち、管理職の割合は9.5%でした。
介護というと、子である従業員が主たる介護者となって親を介護するイメージを抱きがちですが、「LCAT」の調査結果では、従業員自身が主たる介護者として親を介護しているパターンは24%しかいませんでした。
日常的に介護をしているといっても、従業員の親が自分の配偶者を介護しているケースや、親が祖父母を介護している状況下、現役世代である従業員は、介護ローテーションの一部に入るといった形で日常的に介護に携わっている状況が発生しているのが実態です。今や介護は、家族や親戚ぐるみで取り組むプロジェクトとなっているのです。
背景には、人口構成上、ケアする側がケアされる側より減ってきている状態があります。若手も巻き込んで、複数人で介護していかなければ成り立たない、難しいフェーズになってきているのだと感じます。
では、主たる介護者でなければ、心理的な負担は軽いのでしょうか?主たる介護者とそれをサポートする人で、どのくらい不安の度合いが異なるのかを分析したところ、抱える不安の割合はほとんど変わらないことが分かりました。
もちろん主たる介護者の方がキャリアに対する悩みは大きく、職場に迷惑をかけていると感じている様子が伺えますが、そうでない人も同じように悩みを抱えています。「LCAT」のデータ分析では、主たる介護者ではない人でも、約7割が心理的負担を感じているという結果が出ました。
上記の悩みのうち、知識不足を不安に思う人の割合が高く、介護中の人のうち、73%が介護を効率的・効果的に行うための専門知識・情報が足りないと感じています。
本格的に介護が始まる前に、必要な知識や分かっておくべきことを準備しておくことは非常に大切。それによって介護中の不安レベルが変わるはずです。
一方、まだ介護に携わっていない人はどのような状況なのか、調査してみました。あくまで回答者の主観ですが、「数年以内に介護が必要」と感じている割合は、30代で4割、40代で5割以上、50代では実に6割に達します。
ではこれらの人々は仕事と介護を両立しなければならないとき、どのような働き方をしたいと考えているのでしょう。
介護休暇制度もかなり充実していますが、制度の利用を希望する人は20%、離職を希望する人は6%でした。やはり大半の人は、できるだけ通常通りに働き続けたいと考えているようです。
しかし、未介護者の約7割は、介護が始まったら仕事を続けられない(37%)・わからない(35%))と感じていることがわかりました。
この2つの回答は矛盾していますが、仕事と介護を両立させたいと考えつつも、実際には難しいのではないかと感じている従業員が大半という現実を示していると言えます。
■介護のタイプ別分布図
「LCAT」の受講者には、さまざまなフェーズ、準備レベルの方々がいらっしゃいます。それを「介護タイプ別全体分布」としてセグメンテーションしました。
受講者2500名をプロットする際のアルゴリズムは、介護対象者の年齢と、介護対象者が要介護認定を受けているか、もしくは、フレイル状態(外出の減少や、冷房がかけられないような状態)にある証拠を示しているか否かで判断しています。
要介護認定を受けていないとしても、介護対象者がフレイル状態とみなされる場合、右側の緊急度が高いセグメント(切迫)になります。フレイル状態でなくても、確率的には介護対象者の年齢が高ければ高いほど、切迫度が高いことが分かりました。
縦軸は自分が介護に使える時間やリソース、知識がどのくらいあるかを示しています。介護に割くリソースがあり、事前準備として介護に関する知識をインプットできていれば、軽負担で済みます。
グラフにあるとおり、1~3年以内に介護が始まると考えている人は、それなりの割合いらっしゃいます。準備している人も多少はいますが、知識のインプットは足りていません。
仕事と介護の両立支援という観点では、分布図の赤い部分(切迫×重負担タイプ)にいる人たちを、早めに救うことが大切です。
介護が始まるのは、まだ先だと思っている人たちも、少しずつでも準備しておくことが重要です。いざ介護が始まったときに、知識があれば軽負担になることも多いからです。
しかし実際のスコアを見ると、介護と仕事の両立を実現する上で必要な知識だけでなく、介護対象者が今後どのように生活してきたいかのかなど、本人に対する理解も多くの人は進んでいないことが分かります。
介護をする上で、介護対象者がどんな生活パターンなのかは非常に重要な情報です。しかし、そのことに関して話し合ったことのない人が多いのが実情です。
切迫度の高い人でも「いつ要介護申請をすべきか判断できる」という問いに「NO」と答えた人は8割、「介護される方の望む介護を知っている」に対しても、8割がNOと答えています。
■まとめ
仕事と介護の両立の実態は、少しずつ変わってきています。
従来は50代を中心とした介護離職が問題とされていました。しかし今後は若手や管理職など中核人材が介護との両立は、エンゲージメントの問題になっていくだろうと考えられます。
また、介護のパターンも多様化しています。主たる介護者として親を介護するだけに限らず、主たる介護者をサポートする立場の従業員も、「仕事と介護の両立」支援の対象に含まれるという考えが一般的になりつつあります。
3つ目は、通常通り働き続けるのが大前提になりつつある点です。人事に相談せず仕事を続けたいと考える人も、介護が始まっているか否かに関わらず半数近くいます。
そして仕事と介護を両立するための最大のポイントが、知識不足、準備不足をなかなか解消できていない点です。
ここ数年、人事の皆様が介護ハンドブックなどを用意したり、セミナーを実施したりされているかと思います。しかし、なかなか実態は変わりません。単純に何らかの教育、啓蒙を行えば良いかというと、どうやらそうではなさそうだと分かってきました。
仕事と介護の両立において、さまざまな変化が起こりつつある今、早いうちから準備を進めていく重要さや、そもそも必要な知識とは何なのか分からないという難しさを乗り越えていく必要があります。
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